洒落怖マニア

独断と偏見で集めた怖い話

赤い女のビラ

禍話~第1夜より~

大学4年生の夏休みって結構ヒマじゃないですか?
俺はもう内定貰っていたし、セミナーも月1しか無い。
研究室の卒論は合格基準が緩いことで有名。だから選んだんだけどね(笑)

そんな訳でバイトに明け暮れてたんだ。
親に仕送りしてもらって一人暮らししてたんだけど、遊ぶお金も欲しいから結構シフトに入って忙しくしてた。

その日は久しぶりにバイトが無くて家でぼーっとしてたんだけど、ふと、溜まってた郵便取りに行かなきゃって思って1階の集合ポストに向かった。

ちなみに俺の住んでいるマンションはオートロックでエレベーター付き。
セキュリティもしっかりしてるし、気に入ってた。

で、集合ポストに着いて郵便を取り出すと、チラシとか葉書とかゴチャゴチャある中に、裸の便箋が1枚ぴらっと入っていることに気づいた。
封筒に入ってないし、宛名も差出人も書いてない。
不思議に思いながら読んでみると、内容はこうだった。

アカいオンナにキをつけてくださいインターホンをシツヨウにオしてきたりノックをシツヨウにしてくるゼンシンマッカなジョセイにチュウイしてくださいそのオンナはつきあっていたカレシにむごたらしくコロされたオンナでハンニンのカレシをサガしていますドアをアけてしまったらカクしモっていたハモノでコロされますタイショホウはレイカンのあるトモダチにキてとタノんでキてもらうしかありませんアカいオンナにキをつけてください


赤い女に気をつけてください
インターホンを執拗に押して来たり
ノックを執拗にしてくる全身真っ赤な女性には注意してください
その女は付き合っていた彼氏にむごたらしく殺された女で
犯人の彼氏を探しています
ドアを開けてしまったら隠し持っている刃物で殺されます
対処法は霊感のある友達に来てと頼んで来てもらうしかありません
だから 赤い女に気をつけてください


精神的に不安定な人が書いたのかと思われる筆跡だ。
平仮名とカタカナがぐちゃぐちゃに混ざってるし、字の大きさもバラバラ。
黒いボールペンで何度もなぞって書いたような…

きもちわるっ!
単純にそう思った。悪戯にしては悪質だ。
集合ポスト脇に置いてあるゴミ箱へ捨てようとした時、他の住民のポストが視界に入った。

そのポストにも同じ便箋が入っていた。
失礼に思いながらも中身を見ると、同じような字体で同じような文面。

他のポストも見てみると、裸の便箋が全てのポストに入っている。
気味が悪くなり、便箋をゴミ箱に捨ててすぐに部屋へ戻った。

この不気味な悪戯は何度か続いたので、他の住民から苦情が届いたのだろう。
管理会社が集合ポストの上に"不要なビラ投函禁止!"と大きく書いたポスターを貼ったり、監視カメラを設置したりと対策をとった。
しかし、そんな努力も空しく"赤い女のビラ"は時折届いていた。

近所に住んでいる知り合いや後輩にビラのことを聞いてみても、見たことも聞いたこともないという。
うちのマンションだけなのか…気持ち悪い。

[赤い女はいよいよこのマンションに狙いを定めました]
ある日、こんな便箋が届いたので、流石に参った俺はバイト仲間との飲み会で相談することにした。

酒が入っていたこともあってか、狂人の怖い話!みたいな感じで盛り上がった。
そしたら皆でマンションを見に行こう!なんてノリになって。
飲み会後、酔っぱらった俺は同じく酔っぱらった皆を連れてマンションへ。
「ココが俺の住んでるマンション。で、あれが俺の部屋ー」
と5階の外廊下を指さし、皆も顔を上げて5階を見た。

え?
俺たちは凍り付いた。
赤い服に長い髪の女が、5階の外廊下をゆっくりと右から左に歩いている。

すると一人の後輩が突然、
「俺、アイツ捕まえてきます!」
と言って非常階段に向かって駆け出した。

「ヤバいからやめなよ!」「バカ、危ないって!!」
と皆で引き留めたが、酔って気が大きくなっていたのだろう。
聞く耳持たずに、どんどん非常階段を上って行ってしまった。

皆でどうしよう、警察呼ぶ?と話している内に、後輩が5階から顔をのぞかせて
「あれ?どこにいるんだ?先輩!女がどっか行っちゃいました!」と叫んだ。

マンションから降りる手段は後輩が使った非常階段とエレベーターのみである。
エレベーターは電気が消えていたので、しばらく動いた形跡はなかったし、階段を使ったなら俺達の前に現れる。
玄関ドアの開閉の音もしなかった。そもそもあんな住民はいないはずだ。

「え?まじでお化けなの?」
メンバーの一人がそう言うと皆酔いもさめて、早々に解散した。

それから数か月、俺はとにかくバイトが忙しかった。
赤い女のことなど忘れるくらいに忙しく、その日は残業しまくって深夜に帰宅した。
疲れのせいかドアの鍵を開けるのに手間取っていた時、蛍光灯が点滅する暗い外廊下の奥に誰かが座っている影を見つけた。

「アカいオンナにキをツけてください」

その人影はゆらりと立ち上がり、言葉を発しながらゆっくりと近づいてきた。

「アカいオンナにキをツけてくださいインターホンをシツヨウにオしてきたり」

あの女だ!やばい!
焦って鍵を開けようとしたがパニックのせいで中々鍵穴に鍵がささらない。

「ワタシはサイサンチュウイしたはずですアカいオンナにキをツけてくださいそのオンナはツきアっていたカレシにむごたらしくコロされ」
「ハンニンのカレシをサガしていますドアをあけてしまったらカクシもっているハモノでコロされます」

女が片手を後ろに回しているのが横目に見えた。
刃物を持ってる!
そう確信した俺はやっとの思いで鍵を開けることに成功して家に逃げ込んだ。
マッハで鍵とチェーンをかけたその時。

ドンドンドンドン!!!ドン!ドン!ドンドン!

ピンポーン!ピンポンピンポーン!ピンポーン!ピンピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

「アカいオンナにキをツけてください!!!そのオンナは!!!」

かなり大きな音と声がしているのに、他の住民は誰も出てきてくれない。
そもそも刃物を持ってインターホンを押して、どうやってドアを叩いているんだろう、なんて妙に冷静な考えが浮かんだ俺は、息を殺してドアののぞき穴を覗いてみた。

女は頭や肩、腕など全身を使って体当たりをしていた。
見るんじゃなかった。完全にヤバい。

そうだ!霊感のある友達を呼べばいいんだ!と思い出したが、そんな友達いない。
とりあえずすぐ来てくれそうな近所の後輩に電話した。

「今すぐ来てくれ!とにかくすぐに!!!」

後輩は了承してくれた。
どの位の時間が経ったかは分からない。
女は絶えずドアを叩きインターホンを鳴らし、叫んでいたが

ピンポーン

と1度はっきりインターホンが鳴らされた瞬間に、女の声もドアを叩く音も止んだ。
恐る恐るのぞき穴を見ると、先ほど呼び出した後輩が立っていた。

「先輩、こんな時間にどうかしたんですか?」

後輩がインターホンを鳴らす瞬間まで女はドアを叩き続けていたはずだが、後輩はそんな音は聞いていないし、女の姿も見ていないと言う。
この後輩に霊感があったかは分からない。
そんなことはどうでもいい、とにかく助かった。

この日から赤い女のビラが投函されることは一切なくなった。
後日ネットで赤い女について調べてみた。
すると全国で赤い女の目撃情報があることを知った。
結構有名な都市伝説らしい。
もしかしたら今も日本のどこかで犯人の彼氏を探して彷徨っているのかもしれない。
だから、あなたも赤い女には気をつけて。

関連話:赤いおんな赤い服の女