二人風呂
禍話~第4夜より~
俺が高校生の頃の話。
佐々木っていう仲の良い友達がいたんだけど、そいつは皆に「シスコン」っていじられてた。
なんでも、毎日姉ちゃんと一緒に風呂に入っているらしい。
佐々木はいじられても、怒ることなく笑って流していた。
普通に良い奴だし、まぁ仲良しな姉弟なんだろうな、と俺も特に気にしてなかった。
ある日の放課後、佐々木の家でゲームに夢中になりすぎて19時になってしまった。
すると、佐々木の母親が
「今日は泊っていったら?明日は土曜日だし」
と言ってくれたので、俺はお言葉に甘えることにした。
佐々木の両親や姉ちゃんは良い人だったし、作ってくれたご飯はどれも美味しかった。
お腹いっぱいになった俺らは、また佐々木の部屋に戻りゲームをした。
2時間くらい遊んで、そろそろ風呂入って寝るか~という流れに。
風呂場に案内してくれた佐々木は、立ち去ることなく、当然のように服を脱ぎだした。
(え?なに?俺と一緒にお風呂入るのか?姉ちゃんとじゃなくても良いのか?)
俺は困惑したが、ガス代節約の為なのかな、と考えることにした。
風呂はよくある普通のシステムバスだった。
高校生の男二人が一緒に入るには、少し狭い。
佐々木は先に身体を洗うらしいので、俺は湯舟に浸かった。
チラチラと佐々木を見たが、いたって普通に髪を洗い終わり、体を洗い出した。
その時。
ペタペタペタペタペタ
幼稚園くらいの子供が裸足で走ってくるような音がした。
(ん?弟とか妹なんていなかったよな。知り合いでも来たのか?)
佐々木はノーリアクションだ。
俺が考えている内に
ペタペタペタペタペタと足音は遠ざかっていった。
すると佐々木が突然喋った。
「あ、ごめん。言ってなかったけど、俺の家出るんだわ」
え?出るって何?幽霊が?
佐々木は続ける。
「無視してれば大丈夫だから」
えぇ…無視するって難しいな。。と思っていたら…
ペタペタペタペタペタ
来た。
俺は正面の壁を見る事に集中し、佐々木は気にせず髪を洗い続けた。
ペタペタペタペタペタ
行ったようだ。
「構っちゃダメだぞ。とにかく反応したらダメだから。」
「わ、わかった」
佐々木が洗い終わったので、交代だ。
俺は髪を洗いだした。
ペタペタペタペたペタ
あぁ、来た。
チラリと横目でドアを見ると、曇りガラスに子供の影がうつっていた。
その影は顔を近づけてこちらを覗いていた。
怖い怖い怖い!
俺はシャンプーする手を止めて、固まってしまった。
すると佐々木がいつもより大きい声で
「さっきのゲームのさー!クリア出来る方法分かったかもしれん!」
と話しかけてきた。
そうか、反応しちゃダメなんだ。
我に返った俺は、なんとか佐々木の話に乗る。
しかし、俺が反応?してしまったからか、影はなかなか帰らなかった。
ドアからの視線を感じる。
(頼む、早くどっか行ってくれ…!)
ドアの方を極力見ないようにしながら、何とか佐々木との会話を続けた。
しばらくすると
ペタペタペタペタペタ
と音がしだした。
(やっとか…長かったな)
ほっとしたのもつかの間。
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ
長い。
もうとっくに走り去って聞こえなくなるはずの足音がまだ鳴っている。
俺は思わず浴室のドアを見てしまった。
子供の顔がドアに張り付いていた。
そしてこちらを見ながら、足踏みをしていたのだ。
会話を止めて呆然としてしまう俺。
足踏みは止まらない。
佐々木が「おい!明日は何して遊ぶ!?」と大声で助け舟を出してくれた。
そのお陰でどうにか何でもない振りを続けることが出来た。
やがて影は諦めたのか、走り去っていった。
それ以降は何もなく、翌朝無事に帰れた。
俺は佐々木が"何故誰かと風呂に入る必要"があるのかが分かった。
シスコンでもなんでもない。
一人であれに反応せずに、平常心でいるのは無理だから。