洒落怖マニア

独断と偏見で集めた怖い話

成人式

燈魂百物語~第3夜より~

Aさんが小学生だったころの話。

夏休みも終わりにさしかかったある日曜日。
Aさんは家でアイスを食べながらTVを見ていると、突然B君が訪ねてきた。

B君は友達で、C君・D君と一緒にいつも4人組で遊んでいる。
今日は遊ぶ約束してなかったけどな、と思いながら玄関を開けると、B君はとても怒っていた。

「おい!お前ら最低だよ!何だよ代理って!!」
と凄い勢いでAさん・C君・B君を批難しはじめた。

Aさんは何のことか分からず、ともかくB君を家に上げて話を聞くことにした。

「"代理"ってなんのこと?」
「しらばっくれる気かよ!
 俺たち4人で16日に遊ぶ約束しただろ?」

16日は昨日だ。
Aさんはそんな約束をした覚えはなかったが、とりあえずB君に話を続けさせた。

「だから昨日いつもの待ち合わせ場所でお前ら3人を待ってた。
 そしたら見たこともないヤツが3人来てさ。俺達と同い年くらいの。」

その知らない3人は、それぞれ
『僕はA君の代わりで来たんだよ』
『俺はC君の代わり』
『僕はD君の代わりだよ』
と代理で来た事を告げたと言う。

おかしいなとは思ったけど、同年代だし怪しそうな奴らでは無かったので、その3人と遊ぶことにしたのだそうだ。

初対面だし何して遊ぼうかとB君が考えていると、代理の子たちが『〇〇ゲームやろうよ!』と言った。

〇〇ゲームとは、いつもの4人組しか知らないはずの複雑な遊びだ。
ルールがいくつもあって、理解するのに時間がかかるので今まで他の子には教えたことがない。
なのに代理の3人はルールを完璧に理解していた。

(あいつら、ちゃんとルール教えたんだな。じゃあ本当に頼まれた代理なんだ。)
B君はそこでようやく"代理"に納得して、心からその子たちを信用して遊ぶことにした。

いつもと違うメンバーで遊ぶのも新鮮で楽しいな、と夢中で遊んでいたら、いつの間にか16時になっていた。
すると代理の3人が
『もう16時だね。よし、そろそろ神社に行くか!』
『そうだね。成人式しないとな。』
と言い出した。

「え?成人式?俺達が?まだ10歳だけど…」
B君が戸惑いながら言ったが
『そうだよ。だって今日成人式の日だろ?』
とさも当たり前のような返事をしてくる。

3人からそう主張されると、B君はそれ以上追求出来ず、一緒に神社に行く事になってしまったという。

3人に連れていかれたのは、隣町にある山のふもとの神社だった。
長い石段を上り境内に足を踏み入れる。夕方の神社には4人以外誰もいなかった。

『じゃ、はじめようか。皆、輪になって』
B君は何をすれば良いか見当もつかなかったので、素直に指示に従い皆と手を繋いで輪になった。
すると、3人がこんな歌を歌いはじめたという。

~♪からすがー

「えっ、何の歌?何するの?」
B君は戸惑い、歌を遮って尋ねた。
『大丈夫、俺らが言った通りに一緒に歌えば良いんだよ』

歌わざるを得ない雰囲気だったので、B君も仕方なく
~♪からすがー
と声を合わせた。

この奇妙な歌は、歌詞もメロディも今まで聞いたことがなかった。
歌詞の意味は、からすや月、ウサギや山など人間ではない何かが泣いているのを慰めるが、なかなか泣き止まない~といったものだった。

~♪いつになれば泣き止むかー

4人で歌っていると、両側の子の手がどんどん冷たくなっているのに気が付いた。
10分も経った頃、流石にB君も飽きてきて(この歌、一体何なんだろう。早く終わらないかな)と思っていたら、ふっと歌が止まった。

「終わったの?今の歌、一体何だったの?」
B君が声をかけても、3人は無言でうなだれた姿勢のまま動かなかった。
「え、ちょっと、大丈夫?」

日はほとんど暮れていて、明かりのない神社の境内は来た時よりかなり暗かった。
3人は相変わらずうなだれたまま、表情も見えない。
怖くなったB君は手を振りほどこうとしたが、両側の子はさらに強く握ってきて、ほどくことが出来なかった。

その時、町に17時を知らせる放送が流れた。
ー良い子の皆さん、17時になりました。お家へ、帰りましょうー

B君の家の門限は17時半だったが、これはチャンスと思い
「ごめん、俺んち門限17時だから帰らなきゃ!」
そう告げると、3人が突然パッと顔を上げて手を離した。

『そうだね!もう17時だ。これで成人式は終わり!おつかれさま!』
そう言って3人は手を繋いだまま、ぱぱーっと石段を駆け下りて行った。
B君は慌てて後を追ったが、もう3人の姿はどこにも見えなかった。

(こんな暗い石段を手を繋いでダッシュで降りるなんて凄いな…)
B君はそう思いながら石段を降りた。
途中、3人が自分の視界から消えるにはココを曲がるしかない、という曲がり角があるが、その先は墓地があるだけだ。
墓地に向かう訳はないよな、と釈然としないままB君は帰路を急いだ。


「…んで、そのまま家に帰ったんだけど、やっぱり腹立つから文句言いに来た!
 代理の人間って何だよ!来れないなら電話してくれればいいのに!」

話を聞いたAさんは背筋が凍っていくのを感じた。
B君はその様子に気づかず、まだ怒っている。
「しかもさ、お前電話に出なかっただろ!帰った後すぐかけたのに!」

当時は携帯電話などなく、固定電話の時代だ。
Aさんは昨日の午後はずっと家にいたが、電話は1回も鳴っていない。

「お前だけじゃなくて、CにもDにもかけたのに誰も出ないしさ!
 仲間外れかよ!何か文句あるなら直接言えよ!!」

「いやいや、違うって。ちょっと落ち着いて考えてくれよ。
 まず……次に………」
Aさんは今聞いた話の疑問点を挙げていった。
すると、事の異常さに気が付いたB君の顔がどんどん青ざめていった。

その後、C君とD君にも確認したが、やはり昨日は遊ぶ約束はしていないし電話もかかってこなかった、と言う。

"成人式"とは一体何だったのか。あの3人はどこの誰だったのか。
結局何も分からないまま。