洒落怖マニア

独断と偏見で集めた怖い話

どんぞくさま

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?374

2023/06/24(土) 00:08:29.30ID:jU2AKj+d0
少し長いけど俺の昔話だ。

俺が中学生だったころ、お盆に爺ちゃんの家に行った時の話。
爺ちゃんの家には古い蔵があって、数十年単位で誰も立ち入ってないような場所だった。

やることがなさすぎて退屈だった俺は興味本位で蔵に入ることにした。
一応施錠はされてたけど窓を施錠する金具?が老朽化で朽ちてたからあっさり入ることができた。

まあ汚い汚いわけよ。
だけどなんか古そうなものが所狭しに置いてあってワクワクしたんだわ。
蔵の中を物色してたら紐で何重にも縛られた汚い木箱があったんだよ。
中には何か固いものが入ってて、動かすとぶつかる音がするしけっこう重かった。
木箱にはお札みたいなのが貼ってあって、こんなん絶対ヤバいやつじゃんって当時の馬鹿な俺は興奮しちゃったんだよ。

一旦母屋に戻って工具箱から紐を切れそうな道具を拝借して、早速木箱を開けようとしたんだわ。
でも紐切っても木箱が開かないんだ。
なんか木箱自体に釘かなんかが打ち付けられてて絶対開かないようになってるんだよ。

イライラした俺はその木箱を壁に投げつけちまったんだよ。
そしたらいとも簡単に木箱が割れた。
そこまでならいいんだけど、木箱の中身まで砕けてた。
なんか気持ち悪い土偶みたいな、とにかく粘土っぽいのでできたキモイ人の形した像だったんだけど、頭と身体は真っ二つだし頭の方も半分砕けちゃってるしで、やべえと思った俺は全部ほっぽって蔵から逃げ出したんだ。

2023/06/24(土) 00:10:07.07ID:jU2AKj+d0
蔵から出た後は埃とか吸いすぎて気持ち悪いし、身体もなんかベタベタするから風呂に入った。
風呂から出たらちょうど夕飯ができたみたいで居間で父ちゃんと母ちゃんとじいちゃんとで飯を食ったんだけど、おかしい。

食べ物の味が全くしない。食感もやばかった。
なんか紙をひたすら齧ってるような気分で、口の中がどんどん乾く感覚。
だけど俺以外はみんな普通に飯食ってるんよ。

気分が悪くなって夕食はほとんど手をつけずに先に部屋で眠ることにした。
だけど寝苦しくてなかなか寝付けなかった。

2023/06/24(土) 00:10:29.60ID:jU2AKj+d0
心配した爺ちゃんが一口サイズのゼリー持ってきてくれたんだけど、なんか食感とか舌触りがレバーみたいに感じて気持ち悪くて吐いた。
しばらくしたら熱も出てきた。

もう夜だったし、そもそもお盆でどこの病院もやってなかったから、母ちゃんは救急車を呼ぼうとしてた。
でも爺ちゃんが止めた。

じいちゃん「〇〇(俺の名前)、お前、夕飯の前までどこ行ってた?」

身体が跳ね上がる感覚だった。
多分めちゃくちゃ動揺してたと思う、爺ちゃんにすぐ気付かれた。

爺ちゃん「まさか蔵に入ったのか?」

普段の優しい爺ちゃんと同じ人間とは思えないくらい、爺ちゃんの語気は強く顔も鬼の形相になっていた。

爺ちゃん「蔵で何を見た?」
俺「木箱を…」
爺ちゃん「どの木箱を見たの?」
俺「紐で縛られてて、お札が貼られてたのを…」
爺ちゃん「それを開けたのか?」
俺「壊しちゃった…箱と箱の中身も」

言った瞬間に爺ちゃんから殴られた。

2023/06/24(土) 00:11:21.34ID:jU2AKj+d0
母ちゃんは叫び声を上げてたし、父ちゃんは何事かと部屋にやってきた。

爺ちゃんは部屋の中を歩き回りながらぶつぶつ何か言ったあと「救急車を呼んでも無駄だ」と言うとすぐに家を飛び出した。
庭から車のエンジン音が聞こえた。
母ちゃんは爺ちゃんの様子に混乱してて、それを父ちゃんが宥めてた。

しばらくすると爺ちゃんが帰ってきた。
しわくちゃの小さいお婆さんを連れていた。

お婆さんは俺を見るともごもごと喋り出した。
熱で意識が朦朧&お婆さんの話し方が方言混じりで何言ってるか全部は理解できなかったので要約するけど、
お婆さん「お前が蔵で見たのは「どんぞくさま」だ。お前は見たし、壊した。本来ならお前はこの後死ぬ。でも私がなんとかする」

そんなことを言うと、お婆さんは家族を部屋から追い出して、俺の枕元に座って巾着袋からくるみぐらいの大きさの木のビーズ?(形は不揃いでゴツゴツしてた)みたいなのを繋げた長いネックレスみたいなのを取り出した。
それでなんかお経みたいなのを唱え始めた。
意味不明だったし正直早く救急車を呼んでほしかった。

2023/06/24(土) 00:12:02.47ID:jU2AKj+d0
熱が下がる気配も体調が治る様子もない。
何時間かわからないくらいそんな状況が続いた後、お婆さんが突然立ち上がった。

お婆さん「諦めてもらうよう説得したが無理だった、戦うしかねえ」
そんなことを言って、爺ちゃんを呼び出して何か話していた。

その後、俺は掛け布団ごと父ちゃんに抱えられて、爺ちゃんの車に乗せられた。
運転席に爺ちゃん、助手席にお婆さん、後部座席に俺と父ちゃんだった。

身体がとにかく暑いし苦しいし意識は朦朧とするのに身体の奥が暴れてるような意味不明な状態で、なぜか爺ちゃんとお婆さんに殺意まで沸いていた。
多分俺は何か叫んでた気がする。
朧げな記憶だけど「俺はおかしくない!」「俺は感謝されているんだ!」みたいな自分でも意味不明すぎることを口走ってた。
身体が勝手に暴れそうになるのを父ちゃんに抑えつけられてた。

2023/06/24(土) 00:12:44.36ID:jU2AKj+d0
車が停まったのは山の中?のお寺か神社?みたいな場所だった。
車が停まってすぐに布団を顔まで被せられて、父親に抱えられて運ばれてたから、そこがどこかまったくわからなかった。

ドタドタと足音が聞こえて、知らないおじさんの声が聞こえた。
これもやっぱり訛ってて、要約する。

お婆さん「どんぞくさまだ 手伝え」
おじさん「えぇっ!? 無理ですよ!「だびぉが」がないじゃないですか」
お婆さん「だびぉが がなくてもやるしかない このままだと犠牲者が増える」

「だびぉが」は俺がそう聞こえただけで実際違うかもしれないけど、おじさんは布団を剥がして俺を見た。
おじさん「あぁ、どんぞくさまに呼ばれたんだなぁ」
中年くらいのおじさんは哀れむような顔をしていた。

再び布団を被せられて、どこかの部屋に寝かされて、何かで四肢を床に固定された。

2023/06/24(土) 00:13:38.91ID:jU2AKj+d0
顔には布団を被せられたままで、とにかく暑いし息苦しかった。
それでも部屋中にお香のような匂いが充満しているのはわかった。

すぐに鼓膜が破れそうなほど大きい音(多分鈴)が鳴り始め、さらに大きな声でお婆さんのお経みたいなのが聞こえた。
頭がおかしくなりそうだったし、実際おかしくなってたと思う。
俺は車内の時みたいに意味不明なことを叫び続けて、ずっと暴れようとしていた記憶がある。
四肢を拘束されたのは俺が暴れないためだったのかと納得をしていたからだ。

その後の記憶はさらに曖昧だった。
起きてるのか寝てるのかわからない、夢と現実の区別がつかなくなった。

2023/06/24(土) 00:14:22.07ID:jU2AKj+d0
お婆さんのお経の声、ずっと鳴り響いてる鈴の音、おじさんの足音が激しくなったと思ったら鳴り止んだ。

突如顔の布団を剥ぎ取られた。

終わったのかと思って恐る恐る目を開けたら、心臓が止まるかと思った。

夕方に蔵で見たあの気持ち悪い土像とよく似た顔の、幼児のような服を着た、小柄だけど子供ではない、女みたいなのが立っていた。

子供にも見えるしおばさんにも見える、そんな感じだった。
土像顔の女が俺を見ながらずっと何かを言っている。

気持ち悪い、と思ったけどそれを口に出してはいけないと本能で感じた。
あのお婆さんやおじさんがいないことや、あんなにうるさかった鈴やお経が聞こえないこと、部屋に漂っていたお香の匂いがなくなっていることは瑣末な問題だった。

俺は、目の前の土像顔の女を怒らせてはいけない。気に入られてもいけない。逃げなければいけない。一つでも間違えたら死ぬことがなぜかわかった。

2023/06/24(土) 00:14:54.61ID:jU2AKj+d0
じゃあどうしたらいい。
俺は泣きそうだった。
身体を横たえているはずなのに、なぜか背後からおばあさんの声が聞こえた。

お婆さん「どうもするな、なにもするな、何も口を聞くな、何も感じてないふりをしろ」

藁にもすがる思いで、言われた通りにした。
ずっと口を閉ざして、表情も変えないように、ずっと動かずに。
目の前の異様な顔をした女に一切反応をしてはいけない。
呼吸も浅かったと思う。

いつの間にか意識がなくなっていたらしい。
目が覚めたら俺は地元の病院のベッドの上だった。

2023/06/24(土) 00:15:32.34ID:jU2AKj+d0
熱中症で倒れて、救急車で病院に運ばれたらしい。
見舞いに来た母ちゃんは安心している様子だった。
そんなはずはなかった。
俺は爺ちゃんの家に行ったはずだった。

そして変な土像を壊し、熱を出してうなされていた。
爺ちゃんの家であったことを話したら、母さんは訝しむように
「父方のお爺ちゃんはあんたが生まれる前に亡くなった」

俺は脳の検査をすることになった。
納得がいかなかった俺は父ちゃんにも同じことを聞いたら、同じように
「俺の父さんはお前が生まれる前に死んだよ」と返された。

爺ちゃんの家のことや、蔵のことを聞いたら「俺の実家は〇〇市(県庁所在地)で、蔵なんかなかったぞ。その実家ももうとっくに売り払ってる」

結局、脳の検査をしても異常はなく、入院直前と爺ちゃんに関する記憶だけが食い違うのを除けば問題がなかった。
すぐに退院して元の生活に戻った。

あれからもう10年以上経つが、やはりあの出来事が熱中症で見た夢だとは思えない。

俺には確かに爺ちゃんがいたし、蔵で変な土像を壊したし、おばあさんやおじさんにも会った。
あのお香の匂い、四肢を拘束され、顔に布団を被さられて息苦しく暑かったこと、土像の顔をした異様な女のこと、どれも夢とは思えない。

どうしても忘れることができないので書き込んだ。
今度記憶の中の爺ちゃん家の土地へ行く予定なのでメモを兼ねて書かせてもらった。
長文・乱文ですまん。