洒落怖マニア

独断と偏見で集めた怖い話

回覧板

回覧板

これは趣味の廃墟探索をやめた男の体験談だ。

大学時代の友人A,Bと3人で、東北地方のとある山にある廃集落を探索した時のこと。
潰れかけた廃屋が点在するなか、一戸だけ表札が付いままの家があった。

3人は好奇心の赴くまま、"吉田さん"の家に入って玄関の戸を閉めた。
家の中は荒れていてカビ臭かったが、それまで覗いた他の家に比べれば家具も残っていて、頑張れば住めそうな気さえする。
吉田さんがきっと最後までこの集落に住んでいたのかなぁ、なんて話していると

「回覧板持ってきましたあ」

突然玄関の方から声が聞こえた。
現在の時刻は23:30。しかも山奥の廃集落だ。ありえない。

玄関も引き戸の向こうももちろん暗闇で、明かりは全くない。

「回覧板、置いときますねー」

3人ともこの異常事態に身動きが取れずにいると、声の主は玄関前にカタン、と回覧板を置いたようだ。

男の声の感じからして、20代位で体格は細身だろう。対して我々3人は元ラガーマンで皆ガタイが良い。
もし相手がナイフ等の武器を持っていたりしても、きっと勝てる。

3人は頷きあって、1人が玄関の引き戸をガラッと開けた。
男が置いたであろう回覧板を素早く回収して、また引き戸を閉める。

バインダーに挟まれた紙には一体何が書いてあるのか。
・・・内容を理解した瞬間、3人は家を飛び出し山の麓までダッシュで逃げた。

紙には達筆な筆文字でこう書かれていた。

 

三人入って行くのを見たから、
吉田さんの家の中に三人居るのは
分かっています。
内一人は五体満足では帰しません。
ちょうない会

 

それ以来3人は廃墟探索はやめたそうだ。

「ザ・禍話 第二十四夜」より